2002.September

9月28日(土)

 でもって、明日は、crowのliveである。
 不安がないといったら嘘だろうか。役者の稽古が本番前3日も空いてしまったし、当日にならないと小屋の中でのペースがわからない。照明の感じや、音響の感じなど、上領氏まかせのことが多いので、把握していない。よほどのコトでもないと切れないとは思うが、しかし、いざとなると心配だ。

 すべてが上手くいったとして、作品の内容については、むしろ、どんな人たちがどんなふうに受け取ってくれるのか、ワクワクしている。
 ライブハウスでこんなことをしてしまうのは、めったにないことだろう。
 しかも、ボクはこの、濃い内容の中に、かなり危ない要素を入れ込んでおいた。ここが、ロードス島だ。飛ぶか、ひるみか、それとも、なんてことなく過ぎ去っていくのか?

 おまえは今、世界の中のどこにいるのか?

9月23日(月)

 CrowのLIVEのための構成と、にらめっこして、照明のイメージを考えていたが、しかし、音楽のLIVEというのは、演劇の照明と違うのだろうし、イメージがわきにくくて困った。
 そもそもが、照明のイメージを考えるのは苦手だ。最近はLABO! では、いつも黒尾氏に全面的にお任せである。ホントは、ボクは、地明かりだけのシンプルな照明が好きなのだが、いずれにせよ、LABO!もCROWもそうはいかないノダ。

 加えて、今回は映像がある。映像も照明も同じ光だから、共存は難しいノダ。うまくいくといいのだが……。

 明日は、スタジオでリハーサル。なんか、スタジオっていうと学生時代のバンドの練習を思い出して、懐かしいなあ〜。規模はぜんぜん違うんだけど。立場もぜんぜん違うけど、ね。

9月18日(水)

 crowのliveがしだいに、形を見せ始めている。
 音楽と演劇のコラボレーションの(ボクらとしての)新しい試み、である。一応、音楽のliveという形式の中に、乗り込んでいるのだが、しかし、そこでシェークスピアが新鮮に輝いている。これは、ちょっと驚きだ。ここに、メッセージ性のある映像が加わる……。わくわくするじゃないか!
 あとは、難しいディテールの処理が山積みになっている……。

 北朝鮮のことは、あまり多くは語りたくない、気がする……。
 国の政治は、個人や家族のためのものだけではないという事実が、またもや浮き彫りになったというコトか。そのためには、地方政治こそが、実質的な生活政治でなければならないし、外交(対国家間政治)はいつだって国民には抽象的なレベル(に見える)の話なのだ。
 もちろん、今回の展開は驚きだ。
 しかし、戦争中は日本人だって、朝鮮人を「拉致」してきて、不当に「奴隷のように」働かせた歴史があるのではないか。いづれ、悲惨な事実だが、両方を同時に取り上げなくてはならない。戦争はまだ終わっていないのだから……。

仕事の合間に → おまけの写真ページ その3
いま仕事でやってるジャポニカ学習帳のおまけの図鑑ページつくりの余波で。

ご存知、ナマケモノ。その親子。一日じゅうほとんど動かない。
得意そうな子どもの顔がどうにも憎たらかわいい。

9月9日(月)

9月9日というと、なんか松本霊士のマンガであったなあ〜。
 でも決定的だったのは、11日なのだ。

「pp」の稽古が始まる。とても順調、といっても、「謎の多い」物語なので、それを解きあかすという、いつもより、一歩も二歩も引いたところから始めているせいだ。もちろん、役者の経験が、僕にやりやすさを与えている。難関はまだまだこれから。登山口で茶をすすっている程のことか。

 一方、「crow」の方は、高村をのぞいた全員と、一回ずつ稽古をしたので、それぞれの中では何かが、確実にスタートしているのだが、ボクの中では、ぜんぜん、形が見えていないのだ。フツーの芝居なら、いかようにも面白味を予想できるのだが。いずれにしても、明日の上領さんと稲葉さんとの打ち合わせ次第だ。
 上領さんもセンスのハッキリしている人なので、話し出すとあっさり決まるかもしれないが、おそらく牽制の仕合いがあるのだ。コラボレーションの戦いの部分でもある。音楽と演劇では、やはり価値観も違いがあるからね。そこが勝負。演劇論の一発でもブチかまさなければなるまいか。
 電話で、真澄さんにcrowの衣装について、相談にのってもらう。LABO!の手持ちを把握しているのは真澄さんだからだ。

 昨晩、寝しなに読んだ、中沢さんの「女は存在しない」という文章が、脳の前頭葉あたりを疼いている。「女は存在しない」。このフレーズは、やはりボクのテーマだなあ〜。

 現代の世界では、あらゆるものがコトバを発し、なにかをひっきりなしに語りつづけているように見える。男が語っている。女たちも語っている。テレビが語る。科学が語る。ことばは地球を埋め尽して、そこを真理の集積体と化しているかのようだ。しかし、あらゆるものが語りをやめないそのような宇宙においてすら、「語られぬことをやめないもの」が、たしかに存在している。それどころか、ますます語られぬことの領域は厚みを増し、彼女たちが身におびる沈黙の深さはいよいよ深まっている。無数の女たちはいる。女の記号、女のイメージ、女の権利は完璧だ。しかし、語ることをやめないこの科学とメディアの宇宙において、「女」はどこにも存在しないのである。

「語られぬことをやめないもの」
 別段、難しいものではない。意識の上には浮上しないまま、ボクらが、大切にしている、心の中の何かなのだ。それは、意識されないのだから、「存在しない」。それを指して、「女」と呼んでいる。「神」とか「共通無意識」とか「魂」とか、なんと呼んでもいいのだが、美を追求する芸術家にとっては、それを「女」と呼ぶのがいちばんしっくりくるのだ。
 そういうものを伝えたいのだ。


9月3日(火)

「BASH」をふたたび見る。
 田中康夫が圧倒的に勝利する。
 ロナウドが移籍する。
 中田、初アシストする。
 タマちゃん、行方知れず。
 で、明日から、ケイコの日々だぜ! フフフ。

 以上、最近気になったコト。

 で、せっかくだから、田中康夫について、語ろう。
 語ろう。語ろう。というのが、彼の選挙手法であり、政治手法だったので、「対話!」とかいった、相手候補の批判的な表現がとても不自然に、長野県民には思えたのだろう。
 とにかく、田中氏が再選したという事実は、喜ぶべきことだ。
 ニホンが変わるための積極的な可能性が消えずにすんだから。うまくいくかどうか、は、まあ、わからないけど、彼にしか可能性はなかったと思う。
 とにかく、これは、国民的な事件だったことは間違いない。
 政治=経済or景気の仕事という、固定観念が古いのだと思う。
 ボランティア、NGOというような利益を追求しない団体が、なぜ存続できているのか、そういうコトが現代なのだ。まあ、少しだけ、劇団も同じだけど……。でも、劇団は90年代からこっちで、あらかた解体されてしまった……。その一番の原因は、東京に基盤を老いていたからだったと思うけどね……。

 マキャベリズムとか、独裁とか、ということは、無視できない政治の問題だと思うんだよね。民意はいつも正しいとはかぎらないからね。議会はもっと怪しいし。一人の強烈な理念が全体を引っ張るなんて、絶対的な独裁はもちろん、今はありえない。あってはならない、とは思わないけど。

 まあ、ありえないよな。

 しかし、ニホンもこれからどうなるか、これまでの戦後社会は、たしかに、「繁栄」を享受してきたけど、それは、ヒジョーに厳格な「経済倫理」なるもの(「会社奉仕」「滅私奉公」「参勤交代」え?)にしたがって、お父さんたちが頑張ってきたからで、まるで、モルモン教徒のように、日本人は厳格だったと思うんだけど、それはもう、望めないよね。
 でも、ボクらは、そういうオヤジたちのみじめな姿を見て育っているからね。あんなの、とても尊敬できないって思ってるからね。

 だから、「オヤジ」は現代のいちばんのキーワードさ。

 問題は、どうやって、「オヤジ」を乗り越えるか、だ?

 ちなみに、「オヤジ」の対義語は「女子高生」あるいは「コギャル」で、「オヤジ」が消えれば、「コギャル」も消えるね。間違いなく。
「オヤジ」が持っているのは金と権力で、「コギャル」が持っているのが若さ、ってコト。その歳であれば、誰でも持てる程度の、ね……。にかかわらず、その歳でなければとても持てないモノ、だ。

(それくらい、現代のニホンは偏っていて、ゆがんでいると思う)

「オバサン」というのは、もう「女」じゃないってコトが共通理解。
「若い男」というのは、ゴマンといるってコトが共通理解。

 じゃ、自分て何?

「女」とか「男」とかって、自己実現のコンセプトじゃないんだ、もう、男の子にとっても、女の子にとっても。

 女の子にとっては、「女」というのは、20歳過ぎれば、もはやあとはドンドンなくなっていくような要素だし、
 男の子にとっては、いくら頑張っても「男」になれるようなポストや余地が、社会にはもうないように思えるんだよね。頭打ちって感じで。

 だめじゃん、こんな社会!
 って、とりあえず、田中康夫は言ってるんだ。
 そういうところは共感できるね。少なくとも……。

 まあ、とりとめがなくなっちゃったけど、
「女」とか「男」とか、という欲望の水路が、とても狭いものになっちまっていて、そこだけだと、とても自分が生きられないっていうのが現代(のニホン)なんだよね。

 ところで、ボクは男なんだろうか?

 そんなふうに考えてみるのも不自然ではない……。

 オチンチンが秋風に揺れているぜ……。(これはウチの犬の話)

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