清経(きよつね)

清経:あの晩は、月のよい晩だった……。私の心を知らぬ奴らは、夜空にうかれているものと思ったろう。腰の横笛をとり出して、興のおもむくままに、いろんな曲を吹いたよ。

コーラス(歌)

遠夜ニ光ル松ノ葉ニ、
懺悔ノ涙シタタリテ、
遠夜ノ空ニシモ白キ、
天上ノ松ニ首ヲカケ。
天上ノ松ヲ恋フルヨリ、
祈レルサマニ吊ルサレヌ。

清経:いい歌じゃあないか。気がふれたと思う奴は思え、という落ち着いた心になれた。月もちょうど、西に落ちかけ、今だ、そう思って、南無阿弥陀仏! どうぞ、浄土へお迎えください。(と、ザッボーン!)こう唱えたか唱えないうちに、私はもう感覚を失っていた(ブクブクブク)……。