清経(きよつね)

三郎:(大きく息を吸って)なまじ途中で名もない者の手にかかるよりは、とお思いになったのでしょう。清経さまは、ぶ ぜ ん豊前の国、柳が浦の沖合いに夜舟を出して、更けゆく月とともに、海にお沈みになりました……。

北ノ方:なんと……。そんなはずはない。おなくなりになるにしても、戦場でお討たれになるか、願わないことだけれども、病気ででも、とは思わないではなかった……。(それを、ご自分で身を投げておしまいになるとは)ああ、なんというなさけない私どもだろう。