あらすじ

 時は源平の戦いのさなか。所は京都。

前段 都にひとり残る妻のもとに、戦場から清経(*1)の家臣淡津三郎が戻ってくる。三郎によって、清経の入水が告げられ、形見の遺髪(*2)が届けられる。が、妻はその遺髪を気丈にも受け取らず、裏切られたくやしさと、悲しみのままに寝入ってしまう。

後段 その夜、妻の夢に清経の亡霊があらわれる。妻は夫が約束に反して自ら命を断ったことを恨み、夫は妻が遺髪を返したことを嘆く。やがて、清経は自分が死を決するに至った事情やその最期の心持ちを語り聞かせ、さらに修羅道(*3)に落ちてからの戦いを描いて、ついには成仏したことを告げて消える。


*1 平重盛の三男。源平の戦いが決着するより先に、豊前の国柳は浦で入水。

*2 「見るたびに心づくし(筑紫)の髪(神)なれば、憂さ(宇佐)にぞ返す、もとの社に」という清経の妻の歌が「平家物語」に載っており、これを機縁にこの曲は作曲されたと思われる。筑紫の神とは、宇佐八幡のこと。

*3 仏教で、衆生が善悪の業によっておもむき住む六つの迷界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天)の一つ。

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