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演出ノートより |
チケット予約 |Message from 渡辺えり子さんNEW

 ご無沙汰しております。そちらも酷暑のような天国でしょうか。
 今、貴方の『砂漠のように、やさしく』を上演すべく、いく度も読み返しているところです。初演から17年。あの頃はまだバブルでした。にもかかわらず、あの頃、貴方が見つめていた都市の行く末が、21世紀以降、ますます現実化してきている事態には驚きを隠せません。まるで、予言のようです。
 戦争、テロ、虐待、自殺、不正、隠ぺい、嫉妬、劣等感。この17年の間に、たくさんのものが崩壊してしまいました。夫は妻を打ち、妻は子を殺し、少女ですら友達を刺すという、この地獄のような現代都市社会には、〈個〉を救い上げる場所はどこにもありません。ただ、どこへ行くというのでなく、息を殺して、身近な世界さえ幸福で安全であればいいと思っている。砂漠の向こうに、どんなミサイルが落ちようが、だれが死のうが、情報が砂のように消費されていくのみです。

 ――個ハ辺境ニアリ。タダ辺境ニアリ。

 それでも、貴方は絶望のさなかで、〈個〉が、〈個〉として辺境に追いやられている事態そのものが「やさしさ」なのだというヴィジョンに魅せられていたのですね。それは、狂気に近い、死に近い、あまりに脱俗的なヴィジョンで、けれど、登りつめた貴方のペンの高まりが、そこへと至ったときの、貴方の身体の興奮と透明感とを、僕は感じることができます。

 ――砂漠はやさしいのね。許してくれるんですもの。昨日までの私を、私がここにいることを。

 それだけではない、同時に貴方は、最後までこの都市の、どこにも行き着かない結末を、「理性の眼」をもって凝視していくことを誓ってもいます。燃えてしまうような都市の熱にうなされながら、情報と欲望と金の奔流に飲み込まれながら、それでも覚め続けるまなざしだけは捨てられない、どうにも捨てることができないと告白しています。

 ――シカシ問題ハ、眠レナイコトダ。

 その死のようなヴィジョンと、覚めたまなざしと、その間をつなぐために、僕は今、新しい世界、新しい自由への希求という20世紀のまぼろしをふたたび胸にひそめて進んでみようと考えています。

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