葵上(あおいのうえ)
霊鬼: ……死にそうな朝。目が覚めると鏡の中に色とりどりの仮面が集積していました。あまり晴れやかな景色なのでさみしい私がうらやましいわ、と皮肉を言うと、仮面たちは不思議そうな顔をして、君はまだ気がつかないの、というのです。気がつくって何のこと、とたずねても仮面たちは鏡の奥でくるくると踊るばかりで教えてくれません。その踊りには切ないようなまぶしいような、残酷なようでいてとても陽気なメロディーがついていて、見ているだけで身体中がとても熱くなるのです。そこはどこ? あたしも行きたい、行って一緒に踊りたい。そういうと仮面たちは言いました。ここだよ、ここに決まってるじゃないか。ここってどこよ、どこなのよ。わかりません。けどとても近い気がするの。今、なんとなくすごく近い気がするのに、でも、もうあたし眠らなくちゃ……。