野口:なんか、あまあい匂いがするよ……。

いちよ:(顔をあげる)

野口:飛んでくる。いままで体から離れていったいろんなものがハチミツのような香りをつけて、きみのもとへ、ひゃらひゃら、くるくる……。

いちよ:(魔法にかかったように、立ち上がって)

野口:さあ、眠れる、そのししむらに帰っておいで……。

いちよ:(後へ引かれる)

野口:それが来ないと、きみはミイラだ。アジの開きだ。カンピョウだ。くるくる、来た来た、くるくる、来た来た……。

いちよ:(さらに後へ引かれる)

野口:きみの体を忘れられずに、まだ足らない。もっと欲しい。そんなあなたはコーヤドーフだ、アタリメだ。

いちよ:(と、止まって)とね、こうして、引き戻される感じ……。ダメよ! あたしを止めてくれなくちゃ。