いちよ:そこで、いちおう、タテマエとして、この部屋を去る前に、あなたの腹の中で決めていたことを、もう一度ここで、つつましやかに言ってみてはくれません?

アキヨシ:関西に、転勤になります……。

いちよ:つきましては。

アキヨシ:つきましては……。

いちよ:ここであなたに。

アキヨシ:ここであなたに……。

いちよ:お別れを告げなくてはなりません。

アキヨシ:お別れを告げなくては――。

いちよ:もろに述べれば。

アキヨシ:もろに述べれば……。

いちよ:こういうことです。

アキヨシ:こういうことです……。

いちよ:私、結婚いたします!

アキヨシ:私、結婚……。

いちよ:いたすのです!

アキヨシ:ちがう、いたさないのです。

いちよ:しかし明日になれば、きっと。

アキヨシ:朝日が昇り――。

いちよ:いたすか?

アキヨシ:いたす、ハメになるかもしれません――。

いちよ:うまい手ね。

アキヨシ:うまい手ね……。

いちよ:ここまで、あたしを深みにはめて。

アキヨシ:ここまで、あた……(と、目を見てびっくりしてなにも言えなくなる)。