男が一人、ぼんやりと、オデコを押さえながら立っている。

男:日暮里は、キャバレーの多い町です。日暮里は、鴬谷の先にあり、おもに乗り換えに使われる駅であることも知っています。でも、一本の、うるしの木があることは忘れていました……。陸橋の下を、今、飛び乗ってきたばかりの貨物列車が、お尻に赤いランプを点けて、あっちの方へ、千葉の方へ、九十九里の方へ去ってゆきます。うるしにかぶれた僕を置いてきぼりにして……。