男 シッ……。風のない時はわからなかった。そこの樹々を、小生はただひとかたまりの樹々としか見ていなかったらしいことに気づいた。(時計を見る)二十四時五十三分、ほぼ五十四分の観察、及びその把握。ええ……っと、そう、風に吹かれて、樹々は思いがけないようにそれぞれの性質の違いを露にした。葉を裏返して大仰に白くなって反り返る樹や、風圧を、吸収しようとしているように、葉を動かさず、つまりじっと耐えているような樹がある。……未知の読者諸君、今日の報告はこれでしめくくる。おやすみ。……では、また明日。

女1 あ……ええ。

女2 また……。

男、去る。