妻:主人が亡くなりました時、私はとうとうその時が来たのだと、自分に言いきかせました。私は、主人の安らぎさえある顔を見て、「お父さん、よかったですね」という言葉が出てまいりました。
 私の言葉を聞かれた方は、冷たい女だと思われたかもしれません。でも私は、主人の生きてゆく苦しみが、こんな形でしか解決出来ないところまで来ていたのかもしれないと、そう思ったのです。
 死に近い日々は、責苦の連続のようでした。今はどんなにかその苦痛が去り、安らかな思いであろうと……