作家:――谷崎さん、それは違う。僕の言っているのはそんなことじゃない。
 僕が言いたいのは、話らしい話のない小説だって充分にありうることだ。
 いいかい、谷崎さん、重要なのは、詩的精神だ。自由で、純粋で、火花の散るような詩的精神。それこそが小説の価値を定める唯一だと、僕は言いたい。