語り手:それは勇気のようなもの、で、ございました。けれど、それは、先ほど盗みを憎んで老婆をとらまえた時の勇気とは、正反対の勇気でございました。

下人:きっと、そうか。

語り手:その勇気は、ふいに静かに湧きい出て、みるみるうちに広がって、下人の心から、あらゆる迷いを消し去ったのでございます。