「ワーニャおじさん」
 ミハイル・アーストロフ
 (森を守る田舎医者)

もしかしたら、100年後、あるいは200年後に生まれてくる人間たちは、こんな退屈で、こんな不器用な生活、鼻で笑うかもしれない。彼らはきっと、しあわせになるための方法をちゃんと見つけるんだ……。でも僕らにはたったひとつの希望しか残っていない。……永遠の眠りにつく最期に、見えてくるかもしれない何か……、できれば明るい何か……。

「チュニジアの歌姫」
 ダーク
 (マルグリットを愛する医者)

あんたに比べたらまだまだヒヨッコだが、釣りを始めてよかったって思うことがひとつある。自分という人間の程度がわかったことさ。一時間、二時間、三時間。どれだけ待っても当たりさえない時の、あの苛立ち具合ときたら! 普段は押し隠してる、妄想、絶望、怒り、嫉妬、邪推、卑劣、下劣なんて、おぞましい感情が頭をもたげて、体中をかけめぐる。

「ジョバンニの父への旅」
 男1(ジョバンニ)

私がザネリを川に突き落とした……。そうすると、どうなるんです……?

「H」〜「発見した男」
 男

僕は、この大発見にワクワクして、飛んで家に帰りましたよ。と思ったら案の定、汗びっしょりで、おまけに雨が帽子の下までしみ通ってて、顔の上に黒い縞々ができてました。ハハハ。

「ドラキュラ伯爵の秋」
 伯爵

もしきみが、そう思っているのだとしたら、それは間違いだよ……。つまりここは、トランシルバニアではない……。だから、ワラキアのお城ではない……。そしてまた、君の家でもない……。しかも、とめどもなくそうではないんだ……。わかるだろう……? 私たちは、いつまでもワラキアの城にたどりつくことはできないし、君も、いつまでも君の家に帰りつくことはできない……。

LABO!版「卒塔婆小町」
 青年(詩人)

まあ、聞きたまえ……。ボクはこのとおり、三文詩人で、相手にしてくれる女の子もいやしない。しかしボクは尊敬するんだ。愛し合っている若い人たち、彼らの目に映っているもの、彼らが見ている百倍も美しい世界、そういうものを尊敬するんだ……。

「ソライロノハナ第二集」
 卒塔婆小町

詩人
なん時間かのちに、いや、なん分かのちに、この世にありえないような一瞬間が来る。そのとき、真夜中にお天道さんが輝きだす。大きな船が帆にいっぱい風をはらんで、街のまん中へ上がってくる……。ボクは子供のころ、どういうものか、よくそんな夢を見たことがあるんです。大きな帆船が庭のなかへ入ってくる。庭木が海のようにざわめき出す。帆桁には小鳥たちがいっぱいとまる……。ボクは夢の中でこう思った、うれしくて、心臓が今とまりそうだ……。

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