ワーニャ:行っちゃった。

風が止まる。

……10年前、僕は姉さんのところでよくあの人に会ってたんです。あの人が17で、僕が37。なぜあの時に、あの人と恋に落ちて、結婚を求めなかったんだろう。きっと簡単だったのに。そうすれば、いまは僕の奥さんだったかもしれない……。そう、それで、いまごろこの嵐で目を覚まして、ブルブル震えるあの人を抱きしめながら、「大丈夫、僕がここにいるよ」てささやいてあげてる……、んだったらいいなア。いいなア。アハハハ。しあわせだなア……。アレ? ちょっとまてよ、いつのまに僕はこんなにトシ喰ったんだ? まぜあの人は僕のことがわからないんだ? ……あのわかったような物の言い方、浅はかな考え方、この世が滅びるなんて馬鹿げた、くだらない思い込み……、どれもこれもぜんぜん僕の好みじゃない!