「ソライロノハナ第二集」
「弱法師」より 桜間級子

「ですから……、わたくしには……、
闘牛場の血みどろの戦いのさなかに飛び下りてきて、平気で砂の上を不器用な足取りで歩いてゆく、白い鳩のような勇気がございます……。
わたくしの白い翼が血に汚れたとて、それがなんでしょう……。
血も幻、戦いも幻なのですもの……。わたくしは……、
海沿いのお寺の美しい屋根の上を歩く鳩のように、争いごとに波立っているお心の上を平気で歩いて差し上げますわ……。
ようございますね……。今はもう、当のご本人にお会いになる時期だと思います。ここへ、身毒さんをお連れいたしましょう……」

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