アキヨシ:(立って)やはり男をつくったほうがいいですよ。

姉:男をつくるチャンスはあったわ……。残業のあとなどに、一杯飲まされて、甘い言葉にのせられて、この人、温泉マークが目印ねと思いながら肩を抱かれて、しけた路地裏トボトボと、その気になりかけたこともあったけど、ああ、おまえが待っている、おまえに嫌な顔されたくない。結婚も上司との恋も修羅場だ。それならば、姉の育った坂の上のことを話してあげよう。そこに純愛に生きた夕鶴たちが、どんな色の羽を染めて帰ってくるのか、そのことばかりを伝えてあげよう。そう思って話したことが、男の一人や二人で片づくことかぁ!