夫:今日はついに腰骨のあたりまで来た。赤茶けて湿り気の全くない細やかな砂だ。手ですくおうにも指の間からさらさらと逃げ出して決してとどまろうとはしない。不快という訳ではない。何故なら埋もれている部分は既にそれ自体砂と化しており、圧迫もなければ摩擦もなく、ただ、砂たちの流れにまかせていればどこへとなり運んでいってくれるからだ。むしろ、今までよりはるかに自由だと言ってよい。砂として生きることがこんなにも軽やかだとは、かつて想像だにしなかった。