女1 ……なんだったかしら。……うんん、なんでも覚えてるわ。あたし、家を出てくる時のことだって覚えてる。少しはね、そりゃ曖昧よ。そりゃそう、だけど、たぶんあの通りよ、記憶通り。あの人の方が取り乱していたわ。あたしは、あの人がここまでついてきてくれるって知っていたけど、あの玄関ではっきり、なんていうかしら、ケジメね、そうケジメをつけたかった。玄関を出るんですものね。……あなた、あたし、ちょっと出掛けてまいります。すぐに戻ります。すぐ帰ると思いますから。……もちろん、二、三日ってわけにはいかないことぐらいわかっていたわ。そりゃそうよね、でも、ほかになんて言っていいかわからなかった。そういう時って、そうなんだと思うの……。