男 と小生は彼女たちをとどめた。考えついたのだ。〈こんばんは〉についての……外国語ではという考えが浮かんだ。〈いい夜ですね〉と言う。小生は知っている、〈いい夜ですね〉と言うのだ、外国では。しかし、日本列島に住む者たちは〈こんばんは〉と言う。〈こんばんは〉……今晩はどうだというのだ。曖昧、尻切れ、不明確。だが、そうだ、今考えついたのは……と(時計を見る)二十四時四十二分の考えはこうだ。つまり……しかし、未知の読者諸君、いい夜とはいえぬ夜もあるではないか。そうだ、そうとはいえぬ夜もあるわけだから、と思いついたのだ。つまり〈こんばんは〉とはそこを、つまり、悪い夜を考えに入れて考案された挨拶である。〈こんばんは〉いかにも、これなら如何なる夜にも使用可能。つまり、曖昧、尻切れ……なんだったかな、曖昧、尻切れ……不明確、そうだ、それは実は叡智であった。つまり深くすぐれた智恵。そう、いや、曖昧こそ叡智、こう言いかえてよいのか……。(時計を見る)二十四時四十三分の疑問、〈こんばんは〉から発した、発展的な疑問。

男、二人を見る。