「H」
「話してくれ、雨のように…」より

「体を手でなぞる。すると、びっくりするくらい、ほっそりとしてうすっぺらなの、あたし、ホントよ、どこまでやせるんだろうって、ほとんどすきとおるくらい、もう嘘みたいに……それでわかるの、気がつくの、おぼろげに、ああ、この小さなホテルで、人とのつきあいも、責任も、不安も迷いも、なんにもなく暮らしてきて、もう五十年が経ったんだって……」

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