「秘密の花園」
野口医師

「ふつうはそうだろ、弟ならば……。
隠れた目と鼻、うっとうしかろと、もたげてやるべきじゃないのかね……。寝ているが、ほんとうはもう起きている。息を殺して、きみの手一挙手一投足を感じながら……。わたしがリングを取ったのはそのためだ。きみら姉弟の関係に、ふいの偶然が入り込まないために。このオンボロアパートにどれほどの雨が吹きつけようと、なんの花が咲こうと、どれほどの他人がなにをわめこうと、わたしは静かにみつめてる。きみら姉弟の細い糸が、どうやって引き合っているのかを」

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