「秘密の花園」
アキヨシ

「僕は今日、この駅を通り過ぎるつもりでいました……。ベルが鳴り、ドアが閉るほんのつかのま、たしかに姉さんと、ぼんやりとホームにひしめく人々の、相も変わらぬ顔を見つめておりました……。でも、僕は、ドアがあと何センチというすき間をすり抜け、窓越しの姉を見送りました……。
いくらか日もたち、水も引き、僕はこのアパートを訪ねました……。でも階段を上がりかけては引き返し、行くたんびに、そんなことを何度くり返したかしれません。姉も、もうあんな指輪、取りに行くことはないと言いました。でも、そんなことじゃないんです、僕が行っては戻ってくるのは……。思えば、二年か、僕は、思えば二年か、僕は、あなたがたのところにお邪魔して、邪魔ばかりしていたんじゃないかと……。」

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