夕方の五時。
春めいた、陽気な黄昏れどき。トムが玄関に現れる。音楽。
トム:路地の向こうに、パラダイスというダンスホールがありました。春の宵ともなれば、窓もドアも開け放たれ、音楽が外まで流れます。ときどき明りが消され、天井から吊るされた大きなガラスのボールに光が当てられる。それがゆっくりと回ると、やわらかな虹が薄暗がりをよぎってゆく。すると、オーケストラはワルツかタンゴか、ゆるやかな、官能的なリズムです。恋人たちが飛び出してくる。人目につかない路地裏で、ゴミ捨て場や電信柱の陰で、キスしあう姿――。
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