下人:何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。

老婆の手はブルブル震えている、肩で息をしている。

下人:(声を和らげて)俺は検非違使の庁の役人などではない、今し方この門の下を通りかかった旅の者だ。だからお前に縄をかけて、どうこうしようというようなことはない。ただ、今時分、この門の上で、何をしていたのだか、それを俺に話さえすればいいのだ。