K:いや、僕は確かにきみを愛してる。でも、それをいったいどうやって伝えたらいいのか。愛してる、愛してる、愛してる、ああ、こんな言葉がなんになる! 言えばいうほど、きみはどんどん遠くなるんだ。

ナディーヌ:カール、わたしも震えてる。さっきから、ドアの向こうであなたの話を聞いていた時からずっと。震えてる。まだ震えてる。わたしもあなたを愛してるわ。ここで初めて会った時から、あなたに会うとなんだかとてもドキドキしたわ。あなたが母と親しそうにしていると、それがとても悔しくて。嫉妬よ、そう嫉妬。でもそれは、あなたがわたしから母を奪おうとしているからなのか、わたしという娘がいながら、母があなたに首ったけになっているからなのか、わたしにはよく分からなかった。それが、昨日、港であなたと会って、そして、行き交う船を見ながら、あなたがあの映画の話を聞かせてくれた時に、わたしはあなたを愛していることが分かったの。ギリシャの監督、アンゲロプロスの「霧の中の風景」。あの現実にはいもしない幻の父親に会うために、国境を越える幼い姉と弟が、あなたの話を聞いているうち、なんだかわたしとあなたのように思えてきたの。