「ちょっとDATAをまとめてみた(W杯を終えて)

日本と韓国それぞれの集客面でのW杯をまとめてみた。
(参考資料:w杯2002データ123 をご覧下さい)

表内の数字は主に新聞発表のもので、後日修正があったものもあるかもしれない(観客数は1次リーグの途中までは来場者数を発表していたが、「空席問題」がクローズアップされる中何故か「販売実数」という名目の数字になってしまった)。よって全体的に数字の精度は疑問が残るのであくまでも目安と言う事にはなるが、面白い特徴が浮き出るので、ここでは各試合の「動員率=(発表)入場者数/公式定員」をキーワードに見ていきたい。

表1から、全体的な動員率は日本開催分の方が高いが、チケット価格が両国の物価指数を反映させずに同額で設定された事から、韓国側では特に割高となり、総合的な動員率の単純比較は意味をなさないであろう。よって以下は細部での比較を行なう。

同じく表1で、日本開催分の札幌と新潟の動員率が目立って低い。
これは1次リーグの1順目にともに2試合が組まれており、「空席問題」のあおりをモロに受けた結果であり、両都市の関心度の低さを表すものではない。それは表2からも明らかで、日本開催の1次リーグは1順目から2順目で動員率が8ポイント以上アップしており、ここではチケットの追加販売の効果が出ていると思われる。

一方韓国側の釜山・光州・蔚山といった都市も1次リーグ1順目に2試合を開催しており、比較的低い動員率も日本開催と同じ理由が考えられるが、この中には3試合も3万人を割る試合(韓国開催1次リーグ24試合中では6試合もある)あり、1順目から2順目の延びも顕著ではない。ことチケットの飢餓に関しては日本側の方が切実だった事が実証されると思う(注)。

表3に日本韓国それぞれの代表試合を抜き出した。
ここで顕著なのは、日本側は代表4試合の平均動員率90.29%に対して開催全32試合の平均動員率は88.27%で、その差はわずか2ポイントであるが、韓国側だと代表7試合のそれが95.20%にも及ぶのに対し、開催全32試合だと79.71%にまで落ちこみ、その差は実に15.5ポイントにも及ぶ。

更に2と3を比べてみると、日本開催分動員率-韓国開催動員率の全体での8.5ポイント差は、それぞれ自国代表試合を除けば「87.93%対74.71%」とその差は13ポイント以上に開く。
代表試合のみとの比較では日本側では2.3ポイント差で、韓国側は何と20.5ポイント差となる。

それ以外にも以下のようなことが分かる。

・表2より、日本開催試合の中で最も動員率の高い試合は日本代表戦ではなく、また日本代表敗退前に行なわれた神戸と新潟のR8であるが、韓国開催分で動員率9割を超える試合は、韓国代表戦と開幕試合ともう1試合のみ。

・日本開催分の低動員率試合は70%台の5試合で、1次リーグ2順目以降では全て8割超。韓国開催分では40%台1試合、50%台2試合、60%台7試合と7割を切る試合が10試合、そのうちR16の試合が1試合ある。

・表2と3より、1次リーグの1順目2順目3順目と経過する中で、日本開催分では日本代表試合の動員率がほぼ安定横ばい傾向に対し、代表以外の試合は常に増えている。一方韓国開催分では逆傾向、代表試合が増加するのに対し代表以外の試合では3順目に5.4ポイント増加するも、2順目では微減している。

以上の数字から、韓国開催分の数字の相当分が、代表試合に支えられたものであり、自国代表以外への興味が薄い韓国の傾向と、自国代表以外の試合にも極めて積極的な興味を示す日本との対比がはっきりDATAで証明される。

過去の大会での詳細DATAが手元にないので、比較が出来ないが総入場に関してはでは前回フランス大会をわずかに下回ると発表されたものの、比較的中小規模のスタジアムを使っている事(日韓合計で45,000人以下の収容スタジアムが11/20)からも、元々全体のパイが下回ることは予想されていたはずだ。

そもそも今回のアジア開催はFIFAのマーケット拡大戦略であったことを考えれば、こと日本に関しては非常に大きな成果といえるのではないか。
今回の大会中に欧州の強豪リーグ国を中心に、「自国代表以外のチームを平気で応援する日本人」は不可解だとの報道も目に付いたが、我々日本人が「W杯に参加したい」「よい試合を見たい」とのモチベーションでこの1ヶ月を過ごした国民であるのは、この統計からも容易に読み取れるはずだ。

その姿勢の何を恥じる事があろうか。

大会全日程終了前に、FIFA会長自らが「最高の大会ではなかった」と異例のコメントを出し大会の評価を貶めてしまったが、「こと興行面に関しては日本国民は最大限の成果を出した」と、JAWOCはぜひアピールしてもらいたい。
更にはこの成果を元に、近い将来の2度目の、そして始めての単独開催となるワールドカップ開催を目標としてもらいたいと切に願う。

(注)いわゆる「チケット問題」に対して、「買いたいチケットがない」日本と「前売りの習慣が薄くチケットが余りまくっていた」韓国が同列に扱われることには異論を唱えたい。

しかし、「空席の目立つスタジアム」に関して韓国側は「チケット問題」を巧妙に持ちだし、前売りが売れず客足の延びなかった試合への批判の矛先をかわしたばかりか、独自にFIFAと交渉し自前のネット販売を認めさせた。
一方、「チケット問題」をFIFAとバイロム社の責任と強調するばかりで独自の対応が遅れ、即売切れの電話販売と、最後まで極めて繋がりづらいバイロムのネット販売を利用し、チケット購入に無用のストレスを与えつづけた日本側の対応能力・交渉能力のなさは多いに批判されなければならない。


2002/06/18
From:甲斐智堯

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