2003.December

12月1日(火)

12月。太陽の力がいちばん衰える季節。冥界から魂が舞い戻ってくる。

LABO! の次の春をシェークスピアの「ペリクリーズ」に決め、翻訳作業に入る。翻訳をしながらこの物語をどう料理しようかと、身近な出来事や世の中の事件と行ったり来たりだ。
人の心の奥に触れるような芝居を作りたいといつも思う。
そう思って、人の心を探してみても、いつも確かなことはわからないままだ。あの人のことも、あいつのことも、あの娘のことも。
露骨なホントの心がこちらまでとどくことはめったになく、そのめったなことが起こったときには、もうこちらも巻き込まれているから、どこが自分で、どこが他人だかわかりゃしない。
失恋やら確執やら嫉妬やら劣等感!
座禅を組んで自分の心の探検にでかけようかと思う。
枕に頭を乗せて夢を見て、夢から夢へ綱渡り、少しうとうととして、また忘れて夢を見ながら、ああ、今の俺の心の奥を占めているのはこんなことなのかと発見する。あの人のことや、あの仕事のこと、あるいはあの言葉……。
けれど、それらがどこへ行きたがっているのかは、未熟なボクにはさっぱりだ。

12月。国境の向こうでもこちら側でも、たいへんなことになっている。
異常な状況だ。

12月4日(木)

ボクが生まれたこの島の海を
ボクはどれくらい知っているんだろう?

とビギンが歌う。沖縄のことを歌う。
沖縄の人々からボクが学んだことは、人は何に支えられて生きているかということだ。
ボクはここにいる。けど、ここにいない。
海はあり、山はある。
けど、問題はここにないということなのだ。ここにはないのだ。

風邪をひいて一日寝ていた。
またまたたくさんの夢を見た。
夢がなだらかにどこかへとボクをいざなってゆく。
ここではないどこかへ。

でもボクはここにいるのだ。この東京に。
たとえ南海の孤島に行こうと、海辺で魚を採って暮そうと、
この世界に東京があることは、もうボクの魂に抜きがたいことになってしまった。なんだか質の悪い、魅惑的な女に引っ掛かってしまったようだな。

ここにいて、ここではないどこかを想うこと。
自分とは違う、遠い世界のことを想うこと。
いまのボクの安らぎと、苦悩とはそんなところにある。
物をつくる理由はそんなところにある。

楽園はいつかは失われてゆく。
失われてゆくことをきちんと見つめていること。

12月25日(木)
お金と健康と安全。
これだけだ。実感できるものは。
実感できるということは、それだけでは思考の末に導き出された「理念」ではないということだ。

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