青いニッポンの美しさ


 日本の1次リーグ突破の劇的な瞬間を受けて、勢いよく、ボクは犬と散歩に出かけた。駆け出した。
 今日、この午後のひとときを、どれだけ多くの人が学校や会社を休み、テレビに釘付けになったろう。仕事場や学校で応援していた人たちもいたはずだ。いなければウソだ。特に子どもたちはこの瞬間の大きさを、喜びを、友達同士で、家族で、みんなで見届けなければいけなかった。
 青いニッポンの勝利を。
 この喜びが、きっと何年後かに、さらに大きな財産となって戻ってくるだろうから――。

 ひとつ残念なコトは、ウチの犬のさして感動的なことではなかった様子。でも、まあ、お構いなしにボクは、駆け出した。
 犬も駆ける。
 男の子がさっそくサッカーボールを蹴っている。
 日が暮れていく――。

 ボクらは今日、発見したのだ。
 この世界に、青いニッポンがあるのだということを。
 日の丸とも君が代とも違う、青くて深くて美しいニッポン!

 ワールドカップが始まる前、日本が勝ったとして、だれがいちばん利益を与えられるかと、ボクは自問した。
 それは、まず、間違いなく、戦った選手たちであり、監督トゥルシエであり、日本サッカーの関係者たちであろう。しかし、しかし、もっとずっとすごいコトは、きっとこの時を多感な時期と重ね合わせた少年たちではないであろうか。
 少年たちよ、誇りに思っていい。
 きみもボクも、この青いニッポンに生まれたのだということを。

 各国の代表選手たちが、インタヴユーに答えている日本の印象も、悪くない。多くの選手たちが日本の人々の暖かさ、親切さ、偏見のなさを讃えている。これはウソじゃないし、お世辞でもないと思う。
 今日のチュニジア戦だって、チュニジアを誘致した奈良県橿原市の市長たちは、「私たちはなんと言われようとチュニジアを応援します」と言っていた。素晴らしい。このおおらかさ、アジア的な美しさ。
 カメルーンと中津江村の交流を取り上げるまでもなく、全国に、たくさんの財産が、代表選手たちによってもたらされている。
 そうして日本のアスリートたちは勝ち続け、青いウェーブが、人々のいちばんインティメートな空間を揺さぶっている。
 2つのコトが両輪となって、ワールドカップがボクらに大きな贈り物をしてくれようとしている。
 さまざまなポジティブな出来事が融合して、きっと何年後かに、新しい、青いニッポンの形となって現れてくるだろう。

 ホントに、ホントに、誇っていい。
 青いニッポンは美しいのだ。

2001.06.14
JIN