Chronology / volume3 / photo gallery


ジョバンニの父への旅
Voyage de Giovanni, a la recherchepere


 振り返ると、男2が松葉杖をついてベンチに座っている。

男2 やあ、どうも……。

男1 どうも……。(ベンチに座る)

男2 どうでした……?

男1 どうでしたって、何がですか……?

男2 何か話してたじゃないですか……。

男1 ああ、ハンカチを落とされましたのでね、落ちましたよって……。

男2 よくある手です……。


女1 それで、いつです……?

男1 いつって、何がですか……?

女1 主人と仲たがいをしたのは……?

男1 仲たがい……? 私がですか……?

女1 ええ、だって今、言ってらしたじゃありませんか……。昔、一緒にオママゴトをした時、いつも主人ばかりがお父さんをやっていて、あなたにやらせてくれなかったって……。

男1 ええ、でも、別にそれは……。

女1 今でも恨んでらっしゃるんですか、そのことを……。

男1 恨んでやしませんよ……。


女2 わかるだろう……? 行っておやり、駅へ……。ジョバンニは、お父さんの無実の罪を晴らしたとたん、自分自身でそれをやったことにされてしまうかもしれない……。

女4 もう遅いわ……。

女2 遅い……?

女4 帰ってきているんですよ、ジョバンニはもう、この街に……。

女2 どこにいるんだい……?

女4 すぐそこです……。呼んでごらんなさい……。

女2 (呼ぶ)ジョバンニ……。


男1 違いますよ。ザネリは殺してないんです。そんなことはだって、もうみんな知ってることじゃないですか。

男2 俺は殺したんだよ、ジョバンニ。

男1 そうじゃない、ザネリ。君は勘違いしているんだ。君は、君の息子があの子を川に突き落としたんだと思って、その罪をかぶるつもりでそんなことを言ってるんだ。

男2 違うよ、ジョバンニ。

男1 いやいや、最後まで聞いてくれ。いいかい。君は息子の罪をかぶる必要なんてないんだ。だって、君の息子はやってないんだから……。


男4 (声だけ)ジョバンニ……、そこから街が見えるかい……? それがお前の街だ……。お前はそこに帰ってきたんだ……。もうだいぶ夜も更けたから、家々の明りも消えはじめているだろうが、お母さんと姉さんの待っている家の灯は、まだついている……。そこへお帰り、ジョバンニ……。もちろん、帰りにあの牛乳屋へ寄って、牛乳を一本、もらってこなければいけないよ。それを持って帰った時、お前の旅は終わるんだ……。

撮影:片桐久文 / (c)2000 labo!, all right reserved

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